Q.高齢になりそろそろ「終活」を考えています。「遺言書」は必要でしょうか?
A.生前に自分自身の気持ちを整理して、また家族の希望を聞いた上で「遺言書」を作成するとトラブルの未然防止となります。
例えば)
Aさんは2人兄弟の長男。亡くなった父親は、自宅を所有していました。
生前の父は日ごろから口癖のように、「自宅は一緒に住んでいる長男に継がせる」と言っていました。父親が亡くなり、続いて母親も亡くなりました。財産は自宅以外にはほとんどありません。自宅から独立している次男は全ての土地を売って現金に換えてほしい。と主張します。
引き続き住んでいるAさんは、親から引き継いだ自宅を手放すのは気が進まないし、かといって相当分の現金を用意して次男に支払うこともできません。
この場合、最終的には調停にまでもつれ込み、結果、自宅を売らざる得ませんでした。Aさんと次男は、この件をきっかけに悪化し、断絶状態になりました。
「遺言書」を作成すれば、このようなトラブルを防ぐことができます。
Q.認知症の義理の父親を長年介護した息子の「嫁」には相続の権利はないの?
息子の「嫁」には、相続の権利はありません。
但し、「寄与分」と認められて相続財産が増加するケースがあります。
「寄与分」とは、遺言書による指示が無くても、被相続人の財産形成に貢献した相続人がいた場合、相続できる割合を増やしましょうという制度です。
具体的には、亡くなった方への貢献度です。
貢献度については、明確な基準が無いため共同相続人が話し合って決めます。
話し合いがまとまらなかった場合は、寄与者が家庭裁判所に調停を申し立てることにより、裁判所が定めることになります。
例として)
亡くなった方の療養看護・病気の看病など
亡くなった方の財産が「増えた」「減らなかった」場合のことです。
嫁の介護の労力に報いる為の方法を以下の通りです。
・生命保険を契約し受取人を息子の嫁にする。
・介護契約を結び、介護費を払う。
・息子の嫁と養子縁組を行い推定相続人にする。
Q.相続対策としてアパート経営を始めたい。と考えたときにまず気を付けることは何?
全体の財産を把握する。必要があります。
例えば「所有されている土地に、アパートを建てるとこんなメリットがありますよ」と提案する不動産の営業マンがいたとします。ただ土地だけの提案ではいけません。
財産全体とは、土地以外にも預貯金、証券など色々となります。資産の活用を考えるには、財産分与、もし借り入れをしてアパート経営した場合に想定されること。など、家族みんなの同意しているのか。といった点も大切です。
全体のお金の流れ、資産と借入のバランスなど俯瞰することがポイントです。
Q.駅まで遠い土地を所有しているのだけど、良い活用方法を教えてほしい
3つの案をご紹介します。
①戸建を建て賃貸する。
戸建の賃貸供給戸数は少ないので場所によっては家賃水準も集合アパートより高く設定できます。
②高齢者施設
高齢者の受け入れ場所を作ることは地域貢献、雇用創出、既存の各業者への仕事の提供など恩恵を享受できる場合があります。
③太陽光発電
太陽光発電施設として活用する方法。
耕作放棄地となっている田畑は、税金がかかり活用に苦慮している方が多数いましたが、太陽光発電パネルの発電量が上がった結果、収入面でも安定活用が可能です。活用方法には補助金、税制上の優遇措置がありますが、前提条件があるので不動産に強いコンサルタントに相談し良い点と悪い点を見極める必要があります。
Q.土地を不動産鑑定するとは?
相続の計算による土地の評価額と実際の売買価格とは乖離する場合が多い。
遺産分割協議が話し合いで整わず、調停になった場合には、不動産の時価を正しく評価するため、不動産鑑定が行われることがあります。
相続税の計算は、土地の評価額は「路線価」をもとに計算します。
路線価で計算した評価額と実際の市場価格である時価とは金額に差があります。
路線価というのは時価(公示価格)の約80%水準に設定されます。
不動産というのはどう評価するかによって価格が大きく変わるため、争いの原因になりやすいのです。実際に土地を売買する際は、現地調査により北道路、段差の有無など環境により売買価格が大きく変わります。
ついては、不動産鑑定という第三者的な立場での評価が求められます。
Q.相続でもめた場合の最終手段はどのようなものなの?
家庭裁判所(家裁)『調停(家裁へ行って話し合う)』です。
「遺産分割調停」とは、遺産分割協議が整わない場合、調停で財産の評価額や具体的な分け方などを決めることになります。調停で財産の評価額や具体的な分け方などを決めることになります。調停には調停委員が通常2名参加し、当事者たちの言い分をそれぞれ聞いて調整しながら合意をまとめていきます。
Q.財産を多くもらいたいと思ったらやるべきこととは?
2段階あります。
1)被相続人が亡くなる前にできること
2)亡くなった後にできること
1)の場合 ①自分に有利な内容の遺言を書いてもらう。②生前贈与を受ける③推定相続人の廃除をしてもらっておく④養子縁組をしてもらう。例)自分の妻や子供を親の養子にして、法定相続人を増やしておくことで世帯としての相続分が増えます。
そして2)の場合 ⑤寄与分を主張する。⑥他の相続人には特別受益があると主張する。⑦評価額の違いを利用する。不動産には3種類の価格があります。固定資産評価額、相続税路線価、時価です。それぞれ目的が異なります。
Q.「生命保険」は相続で争うリスクを減らせるの?
はい。
相続税の基礎控除額が大幅に縮小された結果、相続税を払うことになる人はかなり増えています。
生命保険の死亡保険金には、非課税枠があります。法廷相続人が2人の場合、非課税枠は500万円×2人で1000万円です。支払われた保険金は、葬儀費用や相続税の支払いなど自由に使えます。注意したい点は保険の契約関係です。
生命保険の3つのメリット
1.節税対策になる。500万円×法定相続人の数までの金額が非課税になる。
2.遺産分割争いの防止となる。生命保険金は遺産分割の対象外。
3.納税資金としての確保に役立つ。受け取る生命保険金を相続税の納税資金に活用できる。
Q.「家族信託」とは?
「財産の管理」を任せる人を家族で決めて、財産の承継に活用する仕組みです。
・母親Aさんと息子Bさんのケースでは、
Aさんは自宅を信託財産とし、自分は委託者(財産を信託する人)となり、Bさんを信託の受益者(信託財産の所有名義で財産管理を行う人)にします。
Aさんは委託者であると同時に受益者(信託の利益を受ける人)になり、受益者として信託財産である自宅に住み続けることができます。今後、老人ホームに入居するために自宅を売ることになった場合は、その手続きは受託者のBさんが行います。
信託契約を結ぶ際に、Aさん死亡後の自宅所有者をBさんにしておけば、Bさんが自宅を相続できます。生きているうちに自宅を息子に贈与すると贈与税がかかりますが、信託の仕組みでAさんが死亡するまでは受益者としておけば、名義を移しても贈与税はかかりません。Aさんは、遺言と同様のことを生前に実現できるというわけです。
家族信託では、遺言ではできないような形で財産を自分の望むように相続させることも可能です。
Q.相続が「争続」となる理由は?
主に3つあります。
①遺産の範囲が決まらない。
②遺産の評価額が確定できない。
③取得割合がまとまらない。
Q.相続が「争続」となる理由は?①のケース
①のケース
・父が亡くなったとき、現金が1000万円あった。
それを母が引き継いだ。しかし、2年後に母が死去した。そのとき現金残高が100万円に減っていた。
長男の言い分)
残った100万円が相続財産である。
次男の言い分)
同居していた兄が使ったのではないか?
一体相続財産はいくらあったのかが特定できません。確定までの過程で兄弟間で争いが起こります。
Q.相続が「争続」となる理由は?②のケース
②のケース
・残されたのが親の自宅で、それを同じ敷地内に住んでいる長女が譲り受けたいと申し出た。
長女の言い分)
隣に住んで面倒を見てきた。この家はあげると言われていた。
この土地だけを切り売りしても3000万円ほどだ。
次女の言い分)
この土地は良い場所だから6000万円以上の価値がある。これを姉がもらうなら3000万円を現金でもらいたい。
この場合、貰いたい人は『低く』売って現金化したい人は『高く』評価しようとして、
もめる原因になります。
Q.相続が「争続」となる理由は?③のケース
③のケース
親が亡くなって、3人兄弟が残された。長男は早くから親元を離れ今も遠方に住んでいる。次男は高卒で結婚しないで働きながら親と同居していた。三男は大学卒業後に親元を離れ、現在は結婚して近所に住んでいる。遺産と家と現金6000万円をどのように分けるか?
長男の言い分)
家はいらないからその代わり現金を多めにほしい。以前から仕送りもしていた。
次男の言い分)
親の面倒をずっと見てきたのは自分。家は貰って現金は3等分したい。兄と弟は大学の費用も随分出してもらった。
三男の言い分)
きっちり3等分に分けてほしい。次男は一度も家賃を払っていないのだから面倒をみるのは当然である。このようにお互いに兄弟間の不公平感が噴き出すと争いが始まります。
Q.不動産を共有するにするデメリットは?
共有の不動産は、将来売却などするには、共有者全員の「合意」が必要になります。
自宅など不動産を平等に分けようとして、
2名以上の相続人で共有する旨の遺言を書いてしまうと後々トラブルの原因となります。平等に分けたつもりが実際には共有者の一人がその土地を単独で利用し、他の共有者は無償で土地を貸しているという不平等な状態になっている場合もあり、争いの元となっています。
不動産については、ひとりに相続されるのが良いのです。
Q.現金(預貯金)を平等に遺産を相続する場合に気を付けることは?
「預金」を分けるときは残高が変わることを踏まえる必要があります。
2つの銀行にそれぞれほぼ同額の預金があったので、
遺言書には、甲銀行の預金は長男へ、乙銀行の預金は次男へ、にと書きました。
遺言書を書いたときには、全ての口座に同額が預金されていても、
その後の事情により使ってしまうこともあり得ます。
死後、預貯金の残高に大きな差が出ていたとしたら、当然、不公平感を感じた者は納得できません。もめることになります。
Q.相続税納付の為の財産売却する際の注意点は?
売買契約書を保管しておくことが重要です。
相続開始日の翌日から10ヵ月以内宇に相続税を納付します。
相続した財産を売却して納税する場合があります。
その際に注意したい点は、売却益に対する税金です。
軽減する対策として、
相続開始日から3年10ヵ月以内に相続した財産を売却した場合には、
その売却した財産に対する相続4税分を取得費として収入金額から控除できます。
Q.株式売却の場合
甲さんが相続した株式の財産は5000万円、相続税額は300万円。
1年後、相続したA社の株式を売却しました。この株の相続税評価額が100万円の場合、300万円×(100万円÷5000万円)=6万円を株式の譲渡所得計算上、
取得費に加算することができます。
Q.土地売却の場合
例えば)
乙さんが相続した財産5000万円(土地3000万円、その他の財産2000万円)
相続税は300万円の場合で、1年後、相続し土地を売却した場合。
この土地の相続税評価額は全体では3000万円、今回売却は3分の1の1000万円。
土地は、相続した土地全体に対する相続税分を取得費に加算できます。
300万円×(1000万円÷5000万円)=60万円(取得費に加算して控除できる額)
売却時の譲渡益は、
譲渡価格-(取得費+相続税の取得費加算額+譲渡費用)
Q.賃貸物件を建築する際に気を付けることは?
事業収支のシミュレーションが大切です。見積書は必ず複数必要です。
当然のことながら不動産会社からの土地オーナーへの賃貸物件の建築の提案書は
利益が出る数字になっています。
そこで注意したい点は、
賃貸物件は、築年数が古くなるとやはり市場価値が下がります。
ずっと新築時の家賃で貸すことは難しくなります。そこで家賃を下げると、
当初の想定より収益が落ちることになり採算が取れないことになります。
ポイントは、初期投資を抑えて早期に投資額を回収することです。
Q.相続人が認知症の場合はどうするの?
「後見人制度」を活用しましょう。
認知症の際の相続の問題点は、ご自身の財産が勝手に処分されることです。
認知症は、判断力が不安定であり意思決定(判断)が場面により変わってしまう可能性があります。来、子供同士で争いが起きないように事前に対策を立てることが必要です。
後見人制度は、「法定後見人制度」という認知症などで判断能力が十分では無い方について、本人の権利を守る援助者を選ぶことで、本人を法律的に支援する制度です。
判断力の程度に応じて、後見、保佐、補助の3つの類型に分かれます。利用方法は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。
申し立ては、本人、配偶者、四親等内の親族などが行います。
一方、「任意後見人制度」は、本人に十分判断能力があるうちに、将来に備えて自分が選んだ代理人(任意後見人)に自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約を公正証書よって結びます。
本人の判断能力が低下した場合、
家庭裁判所で本人の任意後継人が選任されて初めてその効力を発します。
Q.「相続税対策」としての「法人」の活用方法は?
例1)『個人が所有するアパートなどの建物を法人に売却する方法』があります。
始めに、建物を所有する法人を設立します。株式会社を設立します。
法人への出資は、子供や将来相続人になる方が行ってください。
本人が出資者にならないことがポイントです。
次に、個人が所有する賃貸アパートなどを設立した会社に売却します。
法人への売却価格は帳簿上の未償却残高で売却します。譲渡価格と譲渡原価が「同じ」になり、オーナーには譲渡所得税が発生しません。
ついては、無税で法人にアパートを売却することができます。
但し、法人は通常の不動産売買の際にかかる不動産取得税、登録免許税などの経費が必要になります。その経費をかけても法人化のメリットがあるのか。判断が必要です。
オーナーは、アパート購入時のローンを売却代金で返済することができます。また、購入する法人側は、建物に新たに担保を設定し、購入資金を銀行から調達することになります。オーナー側は同時に土地については法人との間で賃貸借契約を結び、相場の地代を支払う内容にします。賃貸借契約書には「賃借人は、将来、土地の返還を行う際に借地権の買い取り請求をしない」旨の特約を記載し、契約書のコピーと一緒に土地の無償返還に関する届出書を税務署に提出します。